染矢敦子ブログ Tender wind

〜やさしい風が吹いてきた〜

山の神にいた犬(2)

コロ2

 

そして、月曜日。

「コロって、気がするねえ。」

父と母は、迎える犬の名前をそんな風に話し、父は寄り合いへ、母は動物管理センターへ向かった。

 

父は、動物管理センターの様な場所が苦手だ。

悲しみや痛み、見なくていいものは、見ないで避けたいのだと思う。

父は、犬のテレビや映画も見ない。

愛犬「チャム」の歌も、亡くなってもう5年も経つのに、まだ聴いてくれない。

そう言えば、4月5日はチャムの命日だ。

 

母は、愛するものの為ならば、何でもする。

怖くても、悲しくても、立ち向かう。

その強さを私は尊敬している。

 

その二人の性格から、暗黙の了解。

管理センターへ犬を迎えに行くのは、母の役目だ。

父の一声、母の行動。案外、良いコンビなのかもしれない。

 

初めて、管理センターの犬舍に入った母は

「冷たくて、寂しい場所だね。」

と言っていた。

私が行った時と同じ。

茶色い犬が、そこには一匹いた。迎えが来るのを待っていた。

 

その犬は、車に乗るのを嫌がったそうだ。

管理センターの職員の人に、喜んで抱かれたのに、冷たい場所に連れて行かれたからだろうか。

 

母が話しかける。

「もう、だいじょうぶよ。怖くないよ。」

犬は、大人しくなった。

車の中、静かにしていた犬が、身を乗り出し、外を一生懸命に見ていた場所があったそうだ。

その子は、その辺を誰かと散歩していたのだろうか。

 

 母は、まず動物病院に直行した。

 

子犬だと思っていたその子は、実際老犬で、体には大きな腫瘍があった。

咳もしている。フィラリアだろうと検査をする。

人懐っこく、穏やかで、お利口なその子は、先生の言うことをよく聞いた。

お座りもお手もする。先生が言う。

「うちに来るか?」

母は驚く。病院だったら、ずっとゲージの中だ。

「えっ?!ここですか?」

「違うよ。家で飼うよ。お前は、‘コロ’だなあ。」

そうして、「コロって気がする」と両親が引き取ろうとした犬は、正式に「コロ」になり、お家が決まった。

  

先生の家が受け入れの準備を整える為に、一週間ぐらいは、うちの両親が預かることになる。

コロが家に着いたらすぐに、父からも電話があった。

愛犬チビと散歩をしながら、父は言う。

「犬来た。かあわいい~。もう何処にもやりたくない。」

 

母も言う。

「ものすごいお利口だわあ。かわいくて、かわいくて、洗ってないのに、頬擦りしてしまうんよ。一番いいところに貰われていくのにねえ。その時のことを考えたら、寂しくて、お母さん涙がでるわあ。」

 

多分、お年寄りに飼われ、ゆっくりと散歩をし、とても可愛がられた犬だったのだろう。コロは、そんな犬だそうだ。

 

コロ3

 

「嫁入り道具に…。」

父が小屋を作った。

 

                    つづく

  

 *

 

写真は、父の撮影です。