3の通知表
私が子供の頃は、通知表は一教科に付き、ただ五段階の評価が付くものだった。
ある時…
期末テストは、98点、授業態度も真面目だったのに、音楽の評価が3だったことがある。
それを見て、ショックで私は泣いた。
母も間違いだろうと言った。
でも、それは間違いではなく、その理由を、先生は、私にはっきりとこう言った。
「歌が、ちょっとね…。」
私は、歌が下手と言う理由だけで、通知表が3になったのだ。
私は、子供にしては声が低くて、それはコンプレックスでもあった。
音楽の教科書の歌は、私には高く、可愛い女性アイドルの歌う流行の歌も高くて歌えない。男性の歌を歌う方が好きだった。
そして、その先生の言葉以来、私は人前で歌えなくなった。
でも…。
歌が好きだった。
一人の部屋では、いつも歌っていた。
数学を解きながらだって、私は歌が歌える。
どうしても好きなものは、どうしても諦めきれない。
I was born to sing.
「私はシンガーソングライターです。」
現在、私は人前で、自分の歌を歌っている。
歌い出してからも、しばらくはコンプレックスが消えず、その自信のなさが悪循環を生んだこともある。
だから、ファルセット(裏声)でも歌えるように発声練習をした。
いっぱいライブをした。恥をかきながら、でも一歩一歩前に進んだ。
そしたら、いつの間にか3オクターブの声が出るようになっていて
「ファルセットがキレイだね」
って言ってもらえるようになった。
「天の声を持つシンガーソングライター」とブログに紹介して下さった方がいる。
ライブの後、「声がキレイ。」「高い声のとこが好き。」そんな感想が必ず届く。
「中低音の声が好き。」と言ってくれる人もいる。
自慢をしたいんじゃない。
人の言葉に負けないでって言いたい。
歌が下手だと言われた私が、人前で歌っている。
その歌を聴いて下さる方々がいる。
「ありがとう」そう言ってもらえる。
ライブの後の「ありがとう」に私はいつも涙が出そうになる。
だから、あなたもだいじょうぶ。
大好きなことを諦めないでね。
ちゃんと見てくれる人はいる。
頑張ったら、きっと嬉しいことがやっているから…。
私は、通知表の経験があるから、感謝の気持ちを忘れられずにいるのかもしれない。
だから、その先生にも感謝なんだろうな。
やっと、そう思えるようになったかな・・・。
無駄なものはないんだね。