祖母の短歌(5)
夕飯のお買いもの中、お豆腐を時間をかけてカゴに入れているおばあちゃんがいました。
私はいつも決めてるお豆腐があるので、隣に並んですっすっと2つカゴに入れました。
そしたらそのおばあちゃんに話しかけられたんです。
「それ、美味しいの?」
「はい!私は好きですよ」
「私もそれにしようかしら」
木綿と絹をどっちにするとか
2個なら安くなるとか話をしながら
取りにくそうで、運びにくそうだったので
おばあちゃんの決めたお豆腐を私がおばあちゃんのカゴに入れました。
「ありがとう」
その瞬間におばあちゃんの顔をちゃんと見ました。
目の奥がしゅんとして、熱くなって、涙が出そうになりました。
こんな風に、祖母とお買いものしたかったな。
祖母は事故で歩行が困難だったので、食材やお弁当を買いに行く機会があっても、お金を預かって私だけがスーパーに行きました。
「お寿司と唐揚げ」
一緒に食べたお昼ご飯。その組み合わせが多かったかな。
祖母は一つか二つしか食べなくて、ちょっと切なかったのを思い出します。
祖母の短歌、今日も読んでいます
本からは時々祖父と祖母の家の匂いがして
祖父と祖母の笑顔が浮かびます
栴檀の木陰にしばし休まむかシルバーカーを押す手の痛む
ゆらゆらと歩道よこぎるカマキリにシルバーカーを止めて待ちたり
がむしゃらに働き生きし吾がひと世生きし証に短歌よみつぐ
気に染まぬ嫁でありしか逝きし夫七年すぎてもむかえてくれず
神よりも己を信ずると言ふ孫のバッグに入るる産土神の守り
手に持てる皿の一つを打ち割りて見たしと思ふ時もあるなり